ITSMとは?IT Service Managementについてわかりやすく簡単に解説
ITSM(IT Service Management)は、しばしばIT部門だけの専門用語と思われがちですが、実際には企業全体のビジネス価値を高めるために欠かせない考え方です。これは、ITを単なる技術としてではなく、ユーザーに提供する「サービス」として捉え、その計画、提供、改善を継続的に行うための管理手法を指します。企業の信頼性向上や業務効率化を支えるために、ITSMの導入は今や多くの組織で不可欠なものとなっています。
この記事では、ITSMの基本的な概念から導入による効果、最新のトレンドまでを、初心者の方にも理解しやすい形で紹介します。
1. ITSMとは – サービス志向のIT運用
ITSMは「ITを技術ではなくサービスとして計画・提供・改善し続ける」ためのマネジメント体系です。ユーザーが快適にITを利用できるよう、組織のIT部門がインフラやアプリケーションを安定して運用し、かつ継続的に改善することを目指します。また、ITサービスの提供において、ユーザーのニーズや期待に応えるだけでなく、戦略的なIT活用により企業の成長にも寄与します。
2. ITSMが重視する4つの視点
ITSMを成功に導くための基盤として、以下の4つの視点が重視されています。
- 価値(Value)
- プロセス(Process)
- 人・文化(People)
- テクノロジー(Technology)
価値(Value)は、IT部門を単なるコストの発生源ではなく、ビジネス成果を生み出すパートナーとして位置づける視点です。ITが提供するサービスが、業務効率の向上やユーザー体験の改善にどのように貢献するかが問われます。最近では、KPIや顧客満足度(CSAT)など、定量的な指標での「見える化」が求められる場面も増えています。
プロセス(Process)は、業務を標準化し、繰り返し可能で品質の高い対応を実現するための仕組みです。属人化を防ぎ、安定的なIT運用を支える柱となります。また、プロセスごとに責任者や指標を設定することで、継続的な改善が図られます。
人・文化(People)は、組織の中でITSMを浸透・定着させる上で不可欠な要素です。IT部門だけでなく、利用部門を含むすべての関係者がサービス志向を持ち、継続的な改善に取り組む文化が求められます。組織的なトレーニングや知識共有の場を設けることも重要です。
テクノロジー(Technology)は、ITSMを実現・支援するためのツールやシステムを指します。可視化や自動化といった機能を駆使して、効率性と正確性を両立させた運用が可能になります。近年は、AIや機械学習を活用したインテリジェントな運用も注目されています。
3. 代表的なプロセス
ITSMの中核を成すプロセスには、以下のようなものがあります。
- インシデント管理
- 問題管理
- 変更管理
- サービス要求管理
- 構成・資産管理
インシデント管理は、障害の発生時に迅速な対応を行い、業務への影響を最小限に抑えるための活動です。適切な対応フローとエスカレーションルールの整備が求められます。
問題管理は、繰り返し発生する障害や不具合の根本原因を特定し、恒久的な解決策を講じることで、再発防止を図ります。継続的なログ分析やレビューが成功の鍵です。
変更管理は、システムやサービスの変更を計画的に進めるために、リスクと影響を事前に評価し、安全な変更の実施をサポートします。CAB(Change Advisory Board)を設置する企業も少なくありません。
サービス要求管理は、ユーザーからの定型的な依頼(例:新しいアカウントの発行など)に対応するプロセスです。サービスカタログを整備し、申請・承認のプロセスを明確にしておくと効果的です。
構成・資産管理は、IT資産の構成情報やライフサイクルを正確に把握・管理し、安定した運用の基盤を整えることを目的とします。CMDB(構成管理データベース)の活用が一般的です。
4. 支えるフレームワーク/規格
ITSMを実践・推進する上で、以下のフレームワークや国際規格が活用されています。
- ITIL 4
- ISO/IEC 20000
- DevOps・SRE
ITIL 4は、ITSMのベストプラクティスを体系化した世界的なフレームワークであり、組織の規模を問わず広く導入されています。サービスバリューシステム(SVS)という全体構造の中で、顧客価値を中心とした柔軟な運用が特徴です。
ISO/IEC 20000は、ITSMの管理体制が国際標準に準拠していることを第三者が認証するための規格です。内部統制の強化や顧客・取引先への信頼性証明に有効です。
DevOpsやSREは、開発と運用の連携や継続的なサービス改善を実現する手法であり、ITSMの実践をより迅速かつ柔軟に進めるための補完的アプローチとして注目されています。特にクラウド環境では、これらの実践との組み合わせが成果を高めています。
5. 2025年注目トレンド
ITSMの分野では、2025年に以下のようなトレンドが注目されています。
- 生成AI/機械学習による自動化
- AIガバナンスの確立
- “価値の見える化”
- 人材とカルチャーの重視
- 高度なITSM機能への期待
生成AIの活用により、チャットボットやナレッジ検索の自動応答、障害の予測分析など、サービス対応のスピードと精度が飛躍的に向上しています。
一方でAI活用においては、倫理性や透明性が問われる場面も増えています。これに対応する「AIガバナンス」の整備が必要不可欠となっており、ITSM領域にもその波が及んでいます。
また、単なる運用効率化だけでなく、IT部門が提供する価値をKPIやOKRなどで可視化する“価値の見える化”が求められています。人材面では、スキルセットの拡充や従業員エンゲージメントの向上といった「カルチャー変革」が注目されています
6. ITSM導入のメリット
ITSMを導入することで、以下のような利点が得られます。
- 障害対応の迅速化
- コストの最適化
- ユーザー満足度の向上
- ITとビジネスの連携強化
- 継続的な改善文化の定着
障害やトラブルが発生した際の対応時間を短縮でき、復旧までの平均時間(MTTR)を大幅に削減できます。また、重複投資の排除や手作業の削減により、ITコスト全体の見直しも可能となります。
さらに、サービスレベルの明確化や対応品質の平準化により、社内外のユーザーからの信頼を高めることができます。これにより、IT部門は「守りの機能」だけでなく「攻めの支援機能」として、経営層との連携が強化されます。
PDCAの仕組みを取り入れた継続的な改善により、知見が組織全体に蓄積され、将来的なIT変革への対応力が育まれます。
7. おすすめITSMツール
ITSMを実践するための主要なツールとして、以下の製品が挙げられます。
- ServiceNow
- SolarWinds Service Desk
- Jira Service Management
- Freshservice
これらのツールは、自動化や可視化、統合管理といった機能に優れており、企業の規模や目的に応じて柔軟に選定することが可能です。
ServiceNowは、大規模組織での複雑なワークフロー管理に対応しており、柔軟なカスタマイズ性も高く評価されています。
Jira Service Managementは、アジャイル開発との連携や開発チームとの迅速な連携に適しており、開発と運用の融合を実現します。
FreshserviceやSolarWindsは、中小企業やITSM導入初期の企業にとって使いやすく、スピーディーな立ち上げが可能です
8. まとめ
ITSMは、ITを単なる技術管理ではなく、ビジネス価値を創出する手段として捉えるための管理体系です。プロセスの標準化と適切なツールの活用により、安定したサービス提供と継続的改善を同時に実現することが可能となります。
まずは、インシデント管理やサービス要求管理など、組織にとって影響の大きい領域から取り組みを始めることで、ITSMの価値を実感しやすくなります。小さな成功を積み重ねることで、ITSMの定着と拡張がよりスムーズに進み、最終的には組織全体のDX推進にもつながっていくでしょう。
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